おはようございます。白王店主です。
今回、私のビジネスパートナーであるお店がリニューアルオープンいたしましたのでご紹介します。
Artigiano Ciano(アルティジャーノ・チャオ)
名古屋本店さんです。

〒451-0043
愛知県名古屋市西区新道2-15-8
℡ 052-583-6660
URL https://artigianociao.jp/nagoya
アルティジャーノ・チャオさんは、世界最高級の仕立服(オーダーメイド服)を中心としたクラシコ・イタリアのユーズドウェアと、欧州高級革靴を専門で扱う異端の高級ユーズドウェアショップです。
10月1日より、旗艦店である名古屋本店が名古屋駅近くに移転しリニューアルオープンしました。

名古屋本店は基本的に事前予約制ですが、毎週火・金は一般開放日となっておりどなたでもご来店頂けます。
一般的にユーズドというと”中古”や”古着” ”お古”というイメージが先行します。しかしこのお店が扱う洋服は、一般的なお古のイメージを根本から覆す『一生モノの紳士服の継承』 にフォーカスしています。
扱う商品は、新品であれば数十万円以上するイタリア製の超・高級スーツやジャケットたち。
しかし、エルメスやシャネル・アルマーニといったいわゆる『ハイブランド系』の品揃えは皆無。『クラシコ』と呼ばれる、徹底して職人気質で超硬派なブランドで固められています。

日本でそれなりのオーダースーツと言えば、10万~20万のイメージです。この価格帯は機械縫製によるパターンオーダーやイージーオーダーが主で、予め型紙やデータがあり、それを各個人に合うよう微調整し、工業的に画一化された工程で形作られます。
これに対し、職人の手仕事で仕上げられる本場イタリアのオーダー紳士服は『予算は50万円から』という世界です。100万円近くに達する、あるいは超えることも珍しくありません。
それは最高級の服地(服の素材)を用い全ての工程に途方もない時間をかけ、専属の仕立て職人(イタリア語でサルトリア)が文字通り『世界に1着の服』『作品』を作り上げるためでもあります。
※日本のセレクトショップで名を馳せる ラルディーニ・LBM・タリアトーレなどは、いわゆる『モダン・クラシコ』『ネオ・クラシコ』と呼ばれるジャンルで、ファクトリーメイド(工場生産)です。
『クラシコ・イタリア』はその上位互換、あるいは元祖と思って頂ければわかりやすいです。
その工程や価格の根拠を紐解いていくと、伝統工芸品や和服に近いものがあります。完成まで1年以上要することもあります。金額の大半がブランド代ではなく『人件費』という点からも、いかに凄まじい工程を経て1着の作品が形作られているか窺えます。
※オーダーに準じた手作りの工程で作られる既製服も存在し、それですら30万~ という世界です(世界三大既製服に挙げられるブリオーニ・キートン・アットリーニなどが有名)。
そしてこれらの洋服は、『直しながら世代を超えて着続ける』ための構造を、頑なに守り続けています。年齢とともに変化する体型、親から子へ、また別の人へ受け継がれたとき、『修正』『修復』の余地があるよう、見えない部分に余裕をもって作られています。
ただの贅沢品や服道楽の使い捨てではないのです。一生分だけではない、沢山の人々と人生を共にするための服でもあります。
つまりアルティジャーノ・チャオさんに並ぶ洋服たちは、ブランド価値に踊らされることのない、本当の意味での”一生モノ”たちです。
私はこれらクラシコ服が形作られていくほんの1工程を目にしたことがありますが、常人なら気が狂いそうなほど大変で気の遠くなる作業です。
1針1針、甘く縫い、きつく縫い、一定のテンション(強さ)では絶対に縫い上げません。ミシンのように一定の強さで縫ってしまうと、立ちどころに服が硬い表情になります。最上級のとろけるように柔らかい生地であれば、機械縫製だと着た瞬間ミシン目に沿って破れることすらあります。職人は、それを体のシルエットや部位に合わせ、生地に合わせ、メリハリをつけ絶妙なテンションで縫い上げていきます。
また、鋭い目線でハサミを入れ、一発で生地を裁断していく光景はまさに神業。

職歴20年で『新人』といわれ、それだけ時間をかけても大成するとは限らない残酷で厳しい世界。そこから真に突き抜けた職人たちがハンドワークで作る紳士服には、筆舌に尽くしがたい美しさ、着心地の良さ、そして凄みが宿っています。
『纏う』という言葉どおり体の一部になるような、服自身が生き物かのような、そんなシルエットを描きます。


窮屈で肩が凝る既成品のスーツに慣れていた私は、これらのクラシコ服を纏ったとき『これは本当に同じ洋服なのか??』と脳が混乱したものです。
それほどまでに体に吸いつくような着心地と、自分の体のラインを完璧に補正してしまうかのようなシルエットは衝撃であり、『着るには我慢が必要』と思っていたスーツやジャケットの常識を打ち砕いてしまいました。そしてこの金額をもってしても、『果たして職人は割に合うのか?』と思ってしまうほどの圧倒的な作り込みとクオリティを兼ね備えています。

※参考までに、スーツ発祥の地であるイギリスのスーツは、かつてイタリア出身の仕立職人たちによって支えられており、今なお『世界最高の服飾づくりはイタリアにある』と言われる所以はここにあります。
アルティジャーノ・チャオさんはこれら”真のクラシコ・イタリア”の洋服に徹底して特化しています。
人々の固定概念を変えてしまうような素晴らしい洋服であっても、現地に赴き、軽自動車並の予算を払い洋服を仕立てるのは一般人には困難です。オーナーの丹下氏は、これら最高級の洋服を”ユーズドという形で手の届く金額に落とし込めないか”と考えたのが、開業のきっかけだそうです。
実際、店頭に並んでいる商品のコンディションは極めてよく、それでいて新品時の価格の1/3以下が殆ど。オーダースーツを作る金額で、世界最高峰の服が着れる…と考えると、グラッときてしまいます。
また先ほども述べた通り、これらの服は『直せること』を前提に作られています。ちょっと袖が短いな…肩が少し落ちているかな…そう思ったとき、ある程度であれば自分の体型に直すことができてしまう。これは既製服にはない、大きな強みです。
丹下氏は同店で扱う洋服たちを敢えて”古着”と呼ばず、愛着をこめて『Succceed(受け継ぐモノ)』と表現します。

succeed(読み:サクシード)は日本だと『成功・出世』という単語が広く認知されていますが、本来全く別の意味も持ち合わせます。それが『受け継ぐ、継承する』です。
丹下氏は、数百年と脈々と受け継がれてきたクラシコ・スーツの歴史と伝統技術・一生モノとして生を受けた服・お直しを受け生まれ変わる瞬間・そしてその服が新たなオーナーの下で再び歴史を刻み始める瞬間、それらすべてを”受け継がれるべきモノ”として大切にしています。
そしてこれらの唯一無二のプロダクトに巡り合った人の人生が『succeed(うまくいく)といいな』というささやかな想いも込めて、そう呼んでいるそうです。

白王店主がヴィンテージウォッチに持つ”受け継がれるべきモノ”という想いを持っているのと、どこか似たものがあります。私がアルティジャーノ・チャオさんとのタイアップを決めた理由もここにあります。
ちなみにクラシコ・スーツは袖を通さないと真の姿は絶対に分かりません。ハンガーに吊るされた姿は、どこかヨレてやる気なく映ります。これはクラシコ・イタリア服の大きな特徴で、人が着たときに最高のシルエットになるよう徹底し形作られているため一見着倒されたような外見をしています。

”分不相応な気がして着れない” ”社長や高給取りが着るものでしょう?”と卑下せず、ご来店の際には是非気軽な気持ちで袖を通してみてください。スーツに詳しくなくても、ここで書いたことが何となくわかるかと思います。

ちなみに白王店主のお店 WhiteKingsは、名古屋店の一般開放日に合わせて週1回、展示を行っています。
隔週ごとに展示テーマを変え、お楽しみ頂く予定です。
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今回は、アルティジャーノ・チャオさんについてのご紹介でした。
白王店主