Fashion

クラシックな腕時計のサイズ感とは?身に着けるモノのジャストサイズ論

こんにちは。白王店主です。

「腕時計は何だか自分の腕に似合わない」って思ったことありませんか。

特に、腕の細い方がよくおっしゃる気がします。

何となく時計だけが目立ってしまうような、手首から浮いて見えるような、妙な違和感。

見慣れてくるとあまり感じなくなりますが、体格を大きく見せようとオーバーサイズの服を着て、かえって体の細さが強調されるあの感覚です。

店主もずっとこのサイズ感が嫌で、『時計はかっこいいけど自分の細い腕には合わない』と思っていました。

でも、昔の腕時計って実は現代の時計よりずっと小さかったのはご存じですか?

腕時計が大型化したのは2000年代後半くらいからです。
今の腕時計はメンズは径が40㎜~、レディースは30㎜~が一般的です。

2000年代まで、時計の大きさはメンズでも37㎜程度が主流でした。

さらに時代をさかのぼると、30㎜の時計も完全に紳士用でした。

これにはトレンド(流行)と、ドイツ人など大柄な体格の国での販売力を狙って時計メーカーが大型化に舵を切ったのが関係しています。

もともと極東アジアの人々は手首が細い民族です。
日本人に多い16.5㎝ほどの手首サイズに、手首サイズが20㎝程もあるゲルマン民族(ドイツ系)や欧米人向けの現代時計が合いにくいのは当たり前ともいえますね。




本来の紳士時計は、長年着用者の動きを邪魔しない適度なサイズが意識されてきました。
普段はカフ(袖元)の中に隠れ、必要な時だけカフを引っ張りちらりと時刻を確認するものでした。

「自分が見るもの」である腕時計が、カフからはみ出し他人に丸見えになっているのは野暮なイメージすらありました。


なぜ半世紀近くもの間、腕時計のサイズはあまり変化しなかったのか?

何かと技術的な制約や要素に結び付けられがちですが、私は上記のように人間工学や使用方法、デザイン論に基づいた哲学が存在したと捉えています。

何十年も変わらなかったということは、そこに答えを見出した人々がいるということです。

道具として着用者を邪魔しないサイズ感であることはもちろん、サイズに美徳やマナーのような意識が存在したといえます。


例えば美しいモノを推し量るとき、『調和』を意識することが推奨されます。

例えば、男性の体型を最も美しく見せるといわれる紳士服(スーツ・ジャケット)は、必ずジャストサイズで着用することが推奨されてきました。

モードファッションの世界ではオーバーサイズな着こなしがありますが、あれらは着崩す前提で細密にデザインされています。

逆にクラシックな仕立ての紳士服は、ジャストサイズで着ることを突き詰めて作られていますので、言い方は悪いですが着崩すとくたびれたサラリーマンみたいな見た目になってしまいます。

バシっとジャストサイズで着用することで着用者と『調和』し、体型をしっかりと補正してくれます。

調和には、余白・比率・サイズが重要とされます



話がそれましたが、今の腕時計のサイズは、過去100年の歴史を振り返るとやや流行寄り・モード寄りになっているといえます。
事実、今腕時計の小型化が再び進んでいるといわれています。



じゃあ腕時計のクラシックなサイズ感って具体的にどんなもんなのか?
サイズの違和感を取り去るには?


そこで役に立つのが、比率計算です。

白王店主は、デザイン工学で用いられる『黄金比』が、意外にもクラシックな腕時計のフィッティングを知るうえで最適だと考えています。

黄金比は、一般的に”最も美しい比率”とされ、この比率に近い値(=近似値)の物体や構造に人は無意識の美を感じるとされます。
有名なのはapple社のロゴなどで、あらゆる部分が黄金比で構成されています。


ちなみに黄金比を数値にすると、 1:1618=約 5:8(整数比)です。

黄金比と密接な関係を持つフィボナッチ列数

つまり、対(つい)になる対象の比率が5:8くらいだと、バランスよく見える。という考え方です。

黄金比はデザイン哲学の1手法ですので、過度に多用したり妄信するものではありませんが、腕との調和やサイズ感・余白を意識する『物差し』として非常に優秀です。

ちなみにヴィンテージのドレスウォッチは、日本人の腕にのせると意外にもこの黄金比=1:1618=約 5:8(整数比)に近い値を示すケースが多いです。

 以下の時計を例に試してみます。

1960’s OMEGA Seamaster Automatic Cal.565  Size:35㎜

時計の詳細情報: https://whitekings.theshop.jp/items/28043929



この時計は極めてオーソドックスな35mmのケース径(フェイスの径)です。
当時の紳士時計のセオリーに則ったサイズといえます。


現代日本人の手首周囲の平均は16.5㎝ほどで、そこから逆算すると多くの方の手首の縦幅は60mmもないことになります。

ちなみに当ブログディレクタの中村は平均値ぴったりの手周囲首16.5㎝、手首の縦幅は56㎜です。

時計と手首の幅を比率に落とし込んでみます。
計算にはこちらのサイトが便利です。
比率計算機:https://tools.m-bsys.com/calculators/ratio.php

数値1に時計の寸法、数値2に手首の幅を入力し「計算する」を押します。
1:xの比率でみる場合は一番上、整数比に直してみる場合は一番下を見ます。

この時計との比率は、整数比でぴったり5:8になりました。

時計の美しさと、腕にのせた時の調和を全面に感じられます


他にも時計と肌露出の割合や、時計の縦幅と掌の幅など、細かくは省きますが様々な部位を対比すると黄金比に近い数字になるのはなかなか面白い結果です。

ちなみに白王店主の手首幅は52mmとかなり華奢ですので、計算上は32mm程度のサイズが似合うことになります。

どうでしょうか?周囲からは非常に高評価です。一番満足しているのは他でもない私ですが


人間の手首は体を鍛えてもサイズが変化しづらい部位です。

例えば店主は、体の成長に伴わず手首周りは中学生頃から殆ど変化していません。

デザインや機能に目が行くばかり、自身の体格に合った時計を選ぶことを忘れがちです。

手首の許容範囲を無視したオーバーサイズは、見た目の違和感だけでなく肌を傷めるなど、健康面に影響を与えることもあります(店主の経験談)。
着用して痛くなる腕時計はそもそもその人に合っていないと言えるでしょう。


あながち机上の空論とも言い切れない比率と一体感の関係性。

身につけるモノを通して”美しい比率とは何か”を考えてみるのも一興かもしれません。

白王店主

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