こんばんは。
ヴィンテージウォッチ屋の白王店主です。
アンティーク時計。ヴィンテージウォッチ。古い時計。
これらのワードからどんなイメージを思い浮かべますか?
「雰囲気を楽しむ」
「骨董品みたいで高そう」
「精度が悪くて何分もズレそう」
「作りが雑そう」
「管理が大変」
「すぐ壊れる」
「あえて使う人は変態」
これらはある意味すべて正解で、すべて間違いです。
私もかつて収集家にマゾヒストのイメージを持っていましたし 同じイメージを持っていました。
しかしヴィンテージウォッチは雰囲気だけのガラクタとは違います。
”現代では超高額になってしまうような贅沢な作り、そして現代にはないデザインの腕時計が、お手頃な値段で買え、実際に着用することができる”
そんな魅力があります。
「ところでヴィンテージウォッチって何?」
という声が聞こえてきそうですので軽くご説明すると、
数十年以上前に作られた古い時計全般を言います。
アンティークウォッチと言ったほうが日本人にはピンとくるかもしれません。
中にはとても高額なものもありますが、殆どは手の届く価格で手に入ります。
(本当に高額なら相当数のヴィンテージウォッチを集めてきた私は港区の高層マンションに住めるはずですが港区はディズニーランドに行くときにしか通りません)。
白王店主のお店のラインナップを見て頂くとわかる通り、5~10万円前後で手に入るモデルが数多くあります。
https://whitekings.theshop.jp/
あの有名なスイスの時計メーカー OMEGAでも、です。
※よくSNSで「安いけど本物ですか?」と聞かれますがこれだけ堂々と偽物を売ったら逮捕されてます。
国産のヴィンテージウォッチなら3万前後のモデルもあります。
ちなみに初心者の方はOMEGAをお勧めします。同年代の国産時計より精度や耐久性に優れています。

現代の時計は大きすぎて似合わない方が、ヴィンテージに答えを求めるパターンは多いです。
手首が細い私もヴィンテージに救いを求めました。沼に落ちました。
歯車やゼンマイの動力だけで動く=電池を使わないエコな時計。
それが機械式時計。
現代では高級時計の代名詞ですが、
今から50年ほど前は、電池式の時計なんてありませんでした。
みんな機械式時計を使ってました。
スーツがすべてオーダーメイドであったように、腕時計もまた特別なアイテムだったのです。
当時の時計は、一資産に数えられるほど高額。
100分の1ミリの部品の精度を職人の腕(手作業)で勝負していた時代。
高いはずです。

現代の大量生産技術で作られた時計では太刀打ちできないほど、丁寧に・しっかりと作られています。
熟練の職人たちが高品質を維持したまま大量にモノを作るという、人海戦術で大量生産しました。
そんな時計が、すぐ狂う・すぐ壊れるような手抜きであるわけがありません。
今から120年前、時計の精度の誤差(日差といいます)は1日30秒以内の誤差に収まるが割と普通でした。
ちなみに今の一般的な機械式時計の精度は日差20秒以内。つまり、時計の基礎は2世紀近く前にほぼ完成していたのです。
ちなみに私が持っていた120年前の懐中時計の精度は日差5秒以内でした。
適切な整備や修理を行えば、きちんと正確な時を刻む時計は多いのです。
ヴィンテージ時計をフリマサイトで探されている方はこんな文言を見たことはないでしょうか。
「古い時計ですので数分の誤差はご了承ください」
古い時計=作りが悪いから精度も悪いのではなく、精度を出すための整備が何十年も行われていないから精度が出ないだけです。
きちんと整備されていない時計を「こんなもんだろう」と思うのは間違いです。
そして「100年後の職人が直せるように」作られています。ちゃんと未来の人のことを考えていていたんです。ロックマンのライト博士の精神です。

徹底的に精度や量産化に取り組みながらも、モノづくりへの誇り・矜持(きょうじ)は素晴らしいものがあります。

確かに水に沈めて大丈夫なヴィンテージウォッチはほぼありません。
当時の防水性能が現代より低かったのはありますが、防水パッキンなどの樹脂でできた消耗品が劣化していることもあります。
ただ消耗品はよほど特殊な時計でなければ今でも手に入りますし、まだ作っています。
消耗品の交換で、日常生活でも使えるようになる時計も多いのです。
注意点として
「販売当時に想定されていなかった使い方」は時計を壊す原因です。
例えばゴルフが娯楽として普及するとは誰も思っていませんでしたので、ゴルフで着用したらぶっ壊れます。
温泉施設やシャワーなんかもそうです。
想定していない使い方をして壊れるのは、別に古い時計に限ったことではありません。
現代の家電製品も同じです。
そういえばおじいちゃんのスピーカーを踏み台にしてエアコン掃除をしていたのを思い出しました。
「当時の生活様式と現代のギャップを知り、常識的な範囲で大切にしてあげる」のは大事なことです。
そう思えば、ヴィンテージウォッチの所有はそこまで構えるものではないと思います。
時にゆっくりと歩幅を合わせ、時にそのポテンシャルに驚く日があって良いのではないでしょうか。
ヴィンテージウォッチは意外と現代でも使えます。というお話でした。
白王店主
この記事へのコメントはありません。